米原食堂

このページでは、万里が好きだった料理を作ります。
第一回 シュパネルスキー・プターチェク
料理と文 井上ユリ

  食べることが大好きな万里は、食べ物にまつわるエッセイもずいぶん書いた。そこで、姉が好きだった料理を紹介しながら、その作り方もお教えすることにする。1回目は、プラハでよく食べた「シュパネルスキー・プターチェク」という不思議な名前の肉料理。



  わたしが大好きで今も時々作る料理にシュパネルスキー・プターチェク(スペインの小鳥)というのがある。何もスペイン的なところはなく、牛肉料理なのに、なぜそんな名前が付いたのか、誰に聞いても満足のいく答えは得られなかった。牛のヒレ肉を軽く叩いて延ばし、片面に芥子を塗り、ボンレスハムあるいはベーコンを敷き詰め、そこにゆで卵四分の一、塩漬けキュウリ、軽く火を通した玉葱四分の一を置いて肉とベーコンでくるみ、楊枝で押さえる。豚の脂身と一緒に熱した鍋に入れ、焦げ目をつける。鍋にコンソメスープを加え、蓋をして肉に火が通るまで煮る。「小鳥」は鍋から取り出し、肉汁を含んだスープにバター炒めした小麦粉を加えてソースを作る。
(『旅行者の朝食』より)



  チェコの家庭料理であり、レストランのメニューにも登場する一皿である。わたしもこの料理名が気にかかり、料理本や旅先でその由来を探してきた。お隣ドイツにもほぼ同じレシピ―の家庭料理があることを知ったのだが、料理名は「リンダ―ルーラーデン」、直訳すると牛肉巻き。作り方がそのまま名前になっていて、「スペイン」も「鳥」も出てこない。スペインのマドリードに旅行した時も、由来につながる料理は見かけなかった。
  ところが数年前、スペインで料理修行をした人たちの出した料理本にあったのです。スペイン南部、コルドバの郷土料理に豚肉でハムやゆで卵を巻いて揚げた「フラメンキン」という一品が。フラメンキンとはコルドバ近くに生息する鳥―フラミンゴのこと。そして料理名の由来は、断面のハムの赤(スペインでは生ハムを使うので赤い)、卵の黄色が鳥のフラミンゴのように派手だから、というのだ。
  万里が知ったら面白がっただろうなぁ。

 〈材料〉二人分(肉巻き4つ)
 牛赤身肉(モモ、ヒレなど) 200g、玉葱4分の1個、ベーコンまたはハム 5~6枚、ピクルス 小2本、ゆで卵 1個、塩、胡椒、マスタード、小麦粉、ブイヨン(固形を溶かしたのでもいいですよ)または水 1カップ、ラードかバターかサラダ油

〈作り方〉
(1)牛の赤身肉(焼き肉用とか)を肉叩きでのばす。厚さ5~6ミリ、10㎝×20㎝ぐらいを4枚。肉叩きがなかったら瓶で。薄切りを2~3枚重ねてもいい。
(2)肉に塩、胡椒して片面にマスタードを塗る。
(3)ここにベーコンまたはハムを1枚のせる。みじん切りの玉葱を少し、ピクルス(大きかったら棒状に切る)、四つ割りのゆで卵を手前に置き、巻いて、端を楊枝で止める。
(4)フライパンを火にかけ、ラードなどの油脂を入れ、この中で肉に焼き色をつける。いったん肉を取り出す。
(5)このフライパンに残りの玉葱、ベーコンまたはハムを刻んだものを入れて弱火で炒める。玉ねぎがしんなりしたら小麦粉を大匙1振り入れ、軽く炒める。
(6)肉を戻し、ブイヨンまたは水をひたひたに入れ、蓋をして肉が柔らかくなるまで煮込む。肉がまだかたいのに煮詰まってしまったら、水を適宜足す。煮込みにかかる時間は肉の値段に反比例するかも。およそ30分~1時間。
(7)ソースが多すぎたら肉をいったん取り出し、とろっとするまで煮詰め、塩コショウで味を調える。
つけあわせはマッシュポテトかクネードリキ。クネードリキは別の回で紹介するので今回はマッシュポテトにした。バターライスにも白いごはんにもあいます。