その7 果物のクネードリキ
 

  私たち一家がプラハに滞在した最後の一年、母は仕事でベルリンに単身赴任した。父も毎日家事ができるほどの時間はなく、週に何度か家政婦さんに来ていただくことになった。このパーニ・トゥルコフスカ(トゥルコフスカ夫人)は料理がとても上手だった。ソビエト学校で食べるお昼はロシア人の職員が作っていたし、たまに外食をすることはあったが、チェコの家庭料理を知ることができたのはパーニ・トゥルコフスカのおかげだ。

  その彼女がわたしたちのおやつにときどき作ってくれたのが、果物入りクネードリキだ。学校から帰って、玄関を開けたときにこのパンの匂いが立ち込めているときの嬉しかったこと!具は果物の水煮。万里が書いているように、プラム、杏を使うことが多い。この2つはチェコの料理やお菓子によく使われる。特にプラムは肉料理のソースにもなるし、チェコを代表する酒、スリヴォヴィッツェはプラムの蒸留酒だ。

  果物のクネードリキは発酵した小麦粉の生地で具を包み、茹でて作る。イーストを使うので、パンの一種だが、食べた感じも大きさも中華まんじゅうに近い。今回は食べやすいように小さく作ってみた。

〈材料〉16個分 

皮  強力粉180グラム、薄力粉120グラム、
インスタントドライイースト3グラム、
砂糖小さじ1、塩少々、 牛乳 約120ml 、卵1個
具  果物の水煮、コンポートなど
プラムの缶詰が見つからず、コンポートを買ってみたが、
ジャムに近いものだった。
イチゴの季節なら、生を使うのもよい。

仕上げ用

溶かしバター、 砂糖、
カッテージチーズ
(リコッタチーズでもよい)

〈作り方〉

(1)小麦粉をふるう。牛乳は人肌に温めておく。卵を溶く。
 
(2)ボールに小麦粉を入れ、イースト、塩、砂糖を混ぜる。真ん中に卵を入れ、周囲の粉を混ぜ込みながら少しづつ牛乳を加えていく。
 
 卵の大きさ、その日の湿度によって牛乳の量を調節する。
(3)混ざったら台の上にのせ、なめらかになるまで捏ねる。
 
(4)ぬれ布巾、(ぬらしたペーパータオルでもよい)をかぶせ、
およそ1時間発酵させる。
夏場は室温でよい。寒い時期なら、暖房の近くで。
鍋にお風呂ぐらいの温度のお湯を入れ、上にボールをのせてもよい。
 
 
 大きさが倍になり、指を入れて離したときに、指の形がそのまま残れば発酵状態はちょうどよい。生地が押し戻してくるようだと、まだ発酵不足なので、もう少しおく。
(5)生地を16等分にして、それぞれを丸める。
 
 
(6)具をのせて包む。
茹でているときに開かないように、しっかり閉じる。
 
(7)お湯をたっぷり沸かして5~6分茹でる。
 
 蒸してもよい。
(8)出来上がったら、すぐに割りばしなどで穴を開けて縮むのを防ぐ。
 
 
中はこんな感じ。
(9)熱いうちに、カッテージチーズ、砂糖、溶かしバターをかけて食べる。